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コラムの泉

プログラマーの競合他社への就職と競業避止義務

カテゴリ
企業法務  >  全般
最終更新日
2017年11月15日 11:23
著者
弁護士法人クラフトマン さん
ポイント
792,067ポイント
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弁護士法人クラフトマン 第206号 2017-11-14

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1 今回の事例 プログラマーの競合他社への就職と競業避止義務
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知財高裁平成29年9月13日判決

 以下事案の説明が長くなりますので、時間のない方は解説のみお
読みください。

 プログラマーであるY氏は、平成24年10月、ソフトウェア
社であるX社との業務委託契約に基づき、ある開発案件に従事する
よう依頼されました。この案件は、X社が、A社とC社から受注し
たものでした。

 Y氏とX社の間では機密保持契約があったほか、委託契約には、
契約期間中及び契約終了後12か月間、X社の業務内容と同種の
行為を行ってはならない」との趣旨の競業避止条項がありました。
なお、「X社の業務内容」については、「発注書に従いX社の企画
に基づきY氏及びX社が協議して決定する仕様に基づく開発及び類
似する開発に限る」という趣旨の限定がありました。

 ところが、Y氏は、平成25年12月にX社の事務所からA社案
件に関するデータをコピーして持ち出して失踪しました。そして、
まだX社との契約が継続中の平成26年4月に、A社とOEM関係
にあるB社に就職し、前記競業避止義務に違反する開発業務に従事
しました。

 そこで、X社がY氏に対し、競業避止条項等に基づき業務を行う
ことの差止及び損害賠償等を求めたのが本件です。

 なお本件は他に種々の争点がありますが、競業避止義務に絞って
取り上げます。




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2 裁判所の判断
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 知財高裁は、以下の理由により競業避止条項の有効性を認めた上
で、競業避止義務違反を認めました。

・ Y氏がX社のプログラマーとしてX社や顧客の営業秘密を取り
 扱うことは当然想定されるから、Y氏がこれらの営業秘密などを
 用いて競業行為を行うことによりX社に不利益が生じることを防
 止する必要がある。

・ そのため、契約終了後12か月、競業避止義務を課する規定は、
 Y氏の職業選択の自由又は営業の自由を考慮しても十分合理性が
 ある。

・  Y氏がソフトウェアの開発責任者を務めるなど重要なポジショ
 ンにあり、営業秘密に触れる機会も多かったことから、上記程度
の制約はやむを得ない。


 もっとも、差止請求については必要性なしとして、また、競業避
止義務違反による営業損失の賠償請求については因果関係なしとし
て、いずれも否定しています。




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3 解説
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(1)従業員退職後の競業は禁止されるか

 今回の事例は、労働者ではなく業務委託先(ただし個人)に対す
契約終了後の競業避止義務について取り上げたものですが、解説
では、実務上より多く問題となる、従業員の競業避止義務について
取り上げます。

 企業経営上従業員退職は当然に生じますが、その中には、会社
の重要な営業秘密や種々のノウハウを知得した従業員もおり、また
、顧客との密接なコネクションを構築した従業員もいるかもしれま
せん。

 それで、こうした退職社員が退職後に競業行為を行うと会社に重
大なダメージが生じるおそれがあると考え、会社が競業を禁止する
必要性を感じる場合もあるのは当然のことです。

 ただし、多くの労働者は、自己のキャリアを活かすためにも、ま
た今後のキャリアアップのためにも、退職後に同じ業界に転職した
いと考えるのも自然ななことであり、退職した従業員の職業選択の
自由に大きく関わる競業禁止という制約は、無制限に効力が認めら
れるわけでもありません。

 では、具体的にどんな点に留意する必要があるでしょうか。


(2)退職後の競業禁止の合意が有効と判断される要素

 この点については、平成24年度経済産業省委託調査「人材を通
じた技術流出に関する調査研究」(*)において過去の裁判例から詳細
に分析がなされていますが、同論考のまとめとして、以下のような
指摘がなされています。

 有効性が認められる可能性が高い競業避止規定のポイント:
 ・競業避止義務期間が 1 年以内となっている。
 ・禁止行為の範囲につき、業務内容や職種等によって限定を行っ
  ている。
 ・代償措置(高額な賃金など「みなし代償措置」といえるものを
  含む)が設定されてい る。

 有効性が認められない可能性が高い規定のポイント:
 ・業務内容等から競業避止義務が不要である従業員契約してい
  る。
 ・職業選択の自由を阻害するような広汎な地理的制限をかけてい
  る。
 ・競業避止義務期間が 2 年超となっている。
 ・禁止行為の範囲が、一般的・抽象的な文言となっている。
 ・代償措置が設定されていない。

 確かに会社としては、ある規程やルールを作りたいと考える場合
に、できればすべての従業員に適用され、かつ禁止の範囲も広いル
ールを作りたいと考えるのは、コスト面・運用面の手間を考えれば
理解できるところではあります。

 しかし現実には、こうしたコストを重視した制度設計の結果、い
ざ違反が起きても裁判所によって有効性が否定されてしまうという
のでは本末転倒といえるかもしれません。

 それで、上のポイントを参考に、会社の業務体制の観点から、競
業避止義務を課す対象を真に必要な職種の従業員に絞ったり、禁止
行為についても、抽象的に競業行為を禁止するよりも、会社にとっ
て重大なダメージとなる特定の行為に絞るといったきめ細かな取り
決めの設定をすることが、より会社の利益を守るのに資することに
なるかもしれません。

(*) http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/
   pdf/sankoushiryou6.pdf





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4 弊所ウェブサイト紹介~労働法 ポイント解説
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弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した労働法については

   http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/roumu/index/

において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイト
において解説に加えることを希望される項目がありましたら、メー
ルでご一報くだされば幸いです。





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弁護士・弁理士 石下雅樹(いしおろし まさき)

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