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コラムの泉

休業を伴うメンタル疾患への対応④(復職準備開始前編)

カテゴリ
労務管理  >  労働安全衛生
最終更新日
2018年06月05日 11:15
著者
株式会社産業予防医業機構 さん
ポイント
23,993ポイント
ポイントランキング100

 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
http://hatarakikatakaikaku.com/
 休業を伴うメンタル疾患への対応について、シリーズで休職の段階に合わせて整理させていただいております。
 なお、公的なガイドラインにつきましては、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」がございます。併せてご参考ください。
 今回は、「休業を伴うメンタル疾患への対応④(復職準備開始前編)」として、コラムを作成しました。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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休業を伴うメンタル疾患への対応④(復職準備開始前編)
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 従業員の精神的なケアは、慎重に取り扱う必要がありますが、企業は病院ではありませんので、精神的なケアだけを行っていれば良いというわけでもありません。
 今回は、メンタルの訴えで休業した場合の対応について、主治医から復職準備可能等の診断が出た場合の対応について要点を示します。
 なお、「企業は医師等といった医療の専門家では無い。」「主治医が主体的に企業の現状を知る術は無い。」「企業側の意思決定者は事業者である。」という構造になっている前提で説明させていただきます。
 産業医には、労働安全衛生規則第15条の2第2項に該当する医師のうち産業医と同様の業務を行える医師を含みます。

復職準備について
 従業員の主治医による復職可能の診断後、産業医復職の可否について事業者に意見することが原則となりますが、復職することが従業員の健康を悪化させることにつながってはなりません。
 従って、産業医は、従業員復職後の勤務に耐えられるかを一定の根拠を元に判断する必要があり、従業員産業医と意見調整し、復職できるか根拠を示す必要があります。そのため、従業員復職準備を行い、休業前の能力が回復していることと勤務可能な健康状態が一定期間維持できるという記録を残す必要があります。 
 なお、復職準備はストレスの増加が見込まれるため、主治医から復職可能又は復職準備可能の診断が出た後に、従業員復職準備を求めるようにしてください。
 私が直接経験したことではありませんが、復職可能の診断書が休業期間等満了日の1ヶ月前に出される事例がありました。その場合、産業医復職可能と判断する根拠が蓄積されていないため、産業医復職可能との判断ができず、その従業員は休業期間等満了を待たずに本人希望で退職してしまいました。
 こういった事態を少しでも避けるために、事前に本人と主治医に適切な情報を提供することは重要です。(参照:休業を伴うメンタル疾患への対応③(診断書受領後編)) 

○主治医の診断が、就業と健康管理の両立に非合理的な場合
 私の経験上、工場で製造に30年間勤務されている従業員に対して、主治医が「復職可。ただし、事務作業のみとすること。」と診断書を発行したことがありました。
 主治医は、企業の現状を知る術は無いことから、工場の事務作業が、簿記や税理士試験科目合格等のスキルを持つ方がITを駆使して行う専門的な仕事であり、メンタル疾患加療後の異動先としては、健康上のリスクが高いことをご存じ無かったようです。確認すると「コピー取りでも良い。」と言われましたが、コピー複合機の進化で「コピー取り」という業務は存在していませんでした。
 主治医から、就業と健康管理の両立に非合理的な診断が出た場合は、産業医が職場巡視で培った作業環境と作業の情報を適切に主治医に情報提供し、合理的な判断に近づけていく必要があります。
 なお、本事例では、復職可の診断が出た後、主治医との情報交換と十分な復職準備期間を設けて、元の製造職場に戻れるまで症状が改善してから無事復職することができました。

復職準備を開始する前の確認事項について
 円滑な復職準備とするために、復職準備を開始する前に、以下の点を確認し評価する必要があります。
⦁ 自傷他害の恐れがないこと(必要に応じて主治医に確認すること)
従業員復職意思と復職後の再発防止に努める意思があるか
⦁ 休業期間中に本人及び主治医と行った情報共有の記録
⦁ 戻る予定の職場(元職場が原則)の業務内容や業務達成に必要な能力等が、休業前と比べて著しく変化していないか
⦁ その他、業務外の精神ストレスに影響及ぼす因子等について

○判断根拠の作成について
 事業者は、産業医が、何を根拠に復職可能と判断するか、定量的な要件を産業医に示させ、従業員本人と関係者(主治医も含む)で共有させましょう。さらに、従業員復職準備中に様式に基づいて記録をさせ、判断根拠を蓄積させることが必要です。
 判断根拠に関する様式には、以下の内容が含まれていることが望ましいです。
⦁ 生活記録表
⦁ 業務類似の課題
従業員自身による休業に至った原因評価と再発防止対策案

○判断根拠をより客観的に記録するために
 前述のように、復職準備によるストレスの増加が見込まれ、従業員は努力することによって、判断根拠を作成することになりますので、企業は、判断根拠を従業員の血と汗の結晶と捉える必要があります。
 従って、判断根拠の客観性を向上させるために、企業としては以下のような復職するための規則として、外部機関の利用を勧奨すると良いでしょう。また、産業医や企業のルールとして、外部機関の利用を必須としている場合もあります。
 なお、平成30年5月時点では、復職に関する外部機関について法的な整備が整っていないことから、従業員の努力を大事に評価するために、守秘義務及び信用失墜行為禁止義務が備わっている国家資格の取得者を通じて判断根拠を得ることが良いでしょう。
⦁ 地域障害者職業センター
⦁ 医療機関併設型リワークセンター
⦁ その他、民間リワークセンター

復職準備開始前の企業側の原則対応
 復職準備開始前に、従業員が取り組むべき内容について、十分に調整しておくことが必要です。特に方針の転換は、従業員のストレスが増えることから避けなければなりません。
 この段階が復職に関するトラブルを避けるために最も重要になります。実効性を高めるために、事業者は上司、人事担当、労働衛生担当者、産業医等それぞれに明確な役割を定め、それぞれが自らの業務と記録をしっかり行うことが必要です。



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